陽時計と日々記

三十路過ぎて囲碁を始めてみるおっさんのブログ。

Kindleは囲碁書籍を読むのに向いているか?

先日、AmazonからKindle Paperwhiteの新型モデルが発売されました。

Kindle Paperwhite (ニューモデル) Wi-Fi 、キャンペーン情報つき

Kindle Paperwhite (ニューモデル) Wi-Fi 、キャンペーン情報つき

 

 前々から興味はあったものの、なんとなく手が伸びず。iPhoneやiPadにKindleのアプリを入れてそちらで読んでいたので、わざわざ専用機のKindleまで買う必要は無いかなー、と思っていたのですが、以前に実機を触った際に、これはこれで利点があるということも分かっていて、そこから1年くらい買い時を探ってたんですが。先日、新型モデルがリリースされる際、6月中の購入で安くなるとのことだったので、良い機会だと思って買ってみました。

Kindleの利点と欠点

iPhoneなどと比べるのとはちょっと違うと思うので、iPad miniあたりと比較すると、大体以下の点ではKindleの方が優れています。ちなみに、Kindleの使い勝手に関しては、iPhoneやらスマホやらにKindleのアプリを入れて使ってみたら、大体わかると思うので、主にハードウェアな面での比較を。

小さくて軽い

iPad miniが約8インチなのに対してKindle Paperwhiteは6インチなので、文庫本サイズに近い。また、iPad miniが308〜331gに対して、Kindle Paperwhiteは205〜217gと100g以上軽い。iPadやiPad miniは、初めて手にした時は「軽い」と思うのだけど、手に持ったまま使っていると、意外と「実はそれほど軽く無い」ということに気付いた人が多いと思う。"たった100g"の差が、意外に大きい。

見やすい

流石に読書に特化しているだけあって、E-Inkのディスプレイは見やすい。長い間、画面を見ていても、目の疲れは本を読んでいる時とさほど変わらない。iPadなどだとIPS液晶なので、全体的にギラついて見えてしまい、どうしても目が疲れてしまう。反面、E-Inkだと暗所に弱いという欠点ができてしまうのだけど、Paperwhiteに関してはフロントライトが付いているので、これは問題無い。

連続稼働時間が長い

満充電からの連続稼働時間はiPadなどよりも断然長い。1日30分程度の使用であれば、ひと月くらい持つっぽい。まぁ稼働時間に関しては気をつけて充電すれば良いだけのことなんだけど、それでもちまちま充電しなきゃいけないよりは、適当に充電するぐらいの方が面倒じゃないのは確か。

 

…と、ここまでが利点。で、以下は欠点。

ユーザーインタフェースが悪い

本を読む以外に色々といじる機器でもないので、それほど気になるものでもないのだけど、とにかくユーザーインタフェースが良くない。機器の詳しい情報を見たい時、最初、どこを見たら良いのかわからなかった。少なくとも、細々とした点で、直感的にわからない・わかりづらいと感じる箇所はある。

目立った欠点はこのくらい。ぶっちゃけ欠点らしい欠点はあまりないのだけど、利点だけ書くのも何だかなぁ、と思ったので。実際の本を読む際の使い勝手なんかは、アプリ版Kindleと大差ありません。

 買う前に調べたこと

実際、Kindleを買う前に、「Kindleの使い勝手ってどうなのよ?」と思って、ネットで色々と情報を得ようとしてみたのですが…なんともまぁ漫画を読むのに向いているかどうかの話題ばかりで、それ以外の感想はほとんど出てこない。書籍を読むのに使っている人の大半は満足しているみたいだけど、満足した人は「満足した」の一言くらいしか言わないので、自然と「向いてる・向いてない」の議論が活発化しているジャンルの話題しか出てこなくなるんだろう。しかし文字の見易さとかではなく、無数にひっかかる情報は、キャラの輪郭が滑らかとかギザついているとかの比較検証ばかりで、それらは囲碁の本には全く無関係ではあるものの、図が多いという意味では活字の書籍よりは漫画に近い立ち位置になってしまうのがなんとも…。

結局、漫画に関するレビューは無視して、日常的な使い勝手(体感的な重さや持ちやすさ、見易さなど)だけを調べ、あとはもう買って使ってみるのが一番いいや、という結論になりました。上にも書いた通り、前々からアプリ版Kindleを使っていたこともあって、いわゆる電子ブックの「悪い点」も、あらかじめ分かっていたので。この「悪い点」に関しては後述します。

で、どうなのか?

結論からいうと、囲碁の書籍に関しては、向いている本と向いてない本があります。

向いているような本は、以下のようなレイアウトの本。

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要は、問題に1ページ、その裏に答えが1ページという、詰碁の本で良くあるスタイル。ただ、以下のようなレイアウトだと、微妙。

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これは、問題だけなら問題ないんですが、答えのページにも当然両方の問題の答えが1ページに記載されているわけなんですが…本だと上の問題に答えを見るときに下の問題の答えを見ないようにすることができるんですが、Kindleで画面として表示されると、なぜか下の答えまで目に入ってしまう。最初に画面全体を見てしまうというか。しかし、これは人によっては全く問題なく本と同じように見られる人もいるかも知れません。

また、とにかく向いていない本は、以下のような本。

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ちなみに、この問題は問題12ではなく、数ページ先の問題の答えです。こんな感じで、特定のページを見返す必要がある本は、基本的に電子ブックリーダーで読むには向いてません。布石とか定石とかの指南本とかになるんですかね。これが先に挙げた「悪い点」なんですが、物理的な本であれば、本の見返すページに指を挟んでおくってことができるんですが、電子ブックリーダーだと、それができないわけです。ページをパラパラとめくることも出来ないので、本の中で行ったり来たりをする必要がある本は、電子ブックリーダーには向いてません(一応、指定したページにジャンプする機能はあるが、物理的な本に比べて使い勝手に雲泥の差がある)。

1ページに1問のスタイルの詰碁や手筋の書籍であれば、本と同じ感覚で読めます。

囲碁の本は容量がでかい

また、囲碁の本は、Amazonで買おうとすると、まず間違いなく下記のような注意書きがあります。

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これはつまり、「全ページ画像ですよ」と言っているようなもので、漫画と同じ構造ということです。そりゃまぁ盤面などを文字には出来ませんし、活字の書籍とは違って文字だけを流し込めば良いものではないので、必然的にそうなるんですが。「図がここにあって、説明文はこの場所にある必要がある」という、カッチリしたレイアウトが必要なので、それは言ってみれば漫画と同じなんですよね。なので、テキストデータではなく、PDFのようなものを買うことになるので、必然的に容量が活字の本よりも格段に大きくなります。本の内容にも寄りますが、大体30〜40MB前後が多いみたいですね。Kindle Paperwhiteだと70〜80冊くらい入る計算になるのかな。そんだけ入ったら十分やろって気もしますが。

買える本と買えない本がある

当たり前なんですけど、AmazonがKindle本として発売してない本は、Kindleでは買えません。マイナビ(毎日コミュニケーションズ)の本はKindle本が出ていることも多いのでさほど困らないのですが、日本棋院から出ている本はKindle本が発売されていません。棋苑図書や東京創元社、誠文堂新光社の本もKindle本は出ていないようです。なので、実質、マイナビの本だけって感じですかね。もっとも、後者の出版社から出ている本の大半は、上に挙げたような電子ブックリーダーに向いてない本だと思うので、素直に本で読んだ方が良いと思うんですが、問題は日本棋院の本で。日本棋院からは結構良質な詰碁や手筋の本が多数出ていて、これがKindleで買えないってのは結構むず痒い。しかも独自フォーマットで電子書籍を出しているってのが、これがまた腹立たしいというか…素直にKindleで出してくれたらなぁ、と思うのですが。

というわけで、これらの"Kindle本が出てない本"をKindleで読むには、いわゆる"自炊"をする必要があります。要は自分で本をバラして全部スキャナーで取り込んで電子書籍化しちゃうわけなんですが、最近は自炊代行業者なんてのもありまして、その辺を活用することで結構なんとかなります。試しに日本棋院から発売されている”打ち込み読本 "を代行業者に頼んでみましたけど、それなりに綺麗にスキャンしてくれました。

これは考えようなんですが、囲碁の本はKindleストアから買ったとしても、容量の大きいPDFのようなファイルの本を買うことになります。なので、普通は「自炊の本は容量が大きくなるから」と敬遠しがちになるんですが、囲碁の本に関しては自炊だろうがKindle本だろうが、どっちみち容量が大きくなるので、そこに関してはさして気にしなくて良いということになります。

買いかどうか

で、結局のところ、買ってどうだったのか、という話になるんですが、買ってよかったです。じつは前々から、「お風呂で湯船に使って詰碁をやりたいけど、本が濡れるのはイヤ」と思ってて、じゃあKindle持ち込もう!ってのが発端で、Kindleを買うタイミングを探してたんですね。で、実際にお風呂で使ってみたんですが、快適でした。Kindle自体には防水機能なんてないのでジップロックに入れて持ち込むわけなんですが、この辺に関してはネットで検索すればいくらでも出てくる情報なので割愛。当然、自己責任で。

上に色々書いた通り、1ページ1問のスタイルの詰碁や手筋の本を読むのに限れば、非常に快適です。

あとは、やはり「お気に入りの数冊」をひとつにまとめられるのは、なんだかんだと便利です。カバンに入れて持ち歩いても良いだろうし、リビングに置いておいてもその時々に読みたい本を出したり直したりする必要なく、Kindleを起動してから読みたい本を開けば良いだけになるので。出かけるときに、とりあえずカバンに突っ込んでおけば、かさばらない本としてすごく便利です。

かといって、本が不要になることは無く、上に書いた「(電子ブックリーダーの)悪い点」などの面から、やはり本には到底及ばないので、結局は同じ本をKindle本と実際の本との二冊持つということにもなったりしますが。用途によって使い分けることによって、Kindleは特定の用途としては非常に便利なデバイスであるとは思います。多くの人はお風呂とか寝る前とかに使うのが多いみたいですが、確かに目が痛くならないので寝る前に読む用途にも使い易いだろうと思います。

電子ブックリーダーというものに興味を持つ人なら、大体は使ったら気に入るんじゃないかと。電子ペーパーの読みやすさは本当に魅力で、目に優しく、実物の本のように読める、という感覚は、一度体験すると、「やっぱiPadとかで読むのはちょっと違う」と思うはずです。